11月9日、ベルリンの壁崩壊から20周年を迎えたドイツでは、「自由の祭典」が盛大に行われました。
当時の様子を映像で見たり聞いたりするたびに、本当に奇跡のようなすごい出来事だったんだなあ!と外国人の私でさえ興奮を覚えるくらいですから、ドイツの人々の喜びは計り知れません。
つい20年前までこの国がふたつに分断されていたなんて今では想像しづらいことですが、学校の地理の授業で、西ドイツの首都→ボン。東ドイツの首都→ベルリン。と習ったことを思い出すと、当時はたしかにふたつの国と認識されていたのですよね・・。

ドイツはこの20年で驚くほど変わったことと思いますが、旧東ドイツの街を訪れると、今でも、西側にはない独特の雰囲気を肌で感じることがあります。街の佇まいや建物、デザイン、人々、それに料理やお菓子にも。
これを**オスタルジーと呼べるかどうかはわかりませんが、不思議となぜか懐かしい感じ。
たびたび訪れているベルリン以外にも、印象に強く残っている街がたくさんあります。

なかでも感慨深かったのがこの街。
null

この写真でピンときた人はかなりのドイツ通。もしくは音楽通ですね。
写真は、トーマス教会前に立つバッハの像。
かの大音楽家、J.S.バッハが活躍した街、ライプツィヒです。
バッハがオルガニスト兼合唱団指揮者を務めた教会の中には彼のお墓もあって、今もファンからの献花が絶えません。

トーマス教会の近くの「カフェ・カンドラー」で、ライプツィヒ名物のお菓子をみつけました。
20091124-leipkashi.jpg
下段にあるのが ライプツィガー・レルヒェという小さなマフィン型の焼き菓子。
外側はサクッとしていて、中はマジパンを混ぜ込んだしっとりとしたクッキーのようです。
”レルヒェ”はドイツ語で”ひばり”の意味。
もともとはひばりを使った食べ物だったのが、動物保護団体の反対にあい、代わりにこのお菓子が発案されたと伝えられています。
バッハの肖像画がついたコイン型のチョコレートはバッハ・ターラー
ターラーとはザクセンで使われていた銀の硬貨のことで、チョコレートはバッハの名曲「コーヒー・カンタータ」にちなんでモカ風味になっています。
ドイツをはじめ、ヨーロッパのお菓子には、その土地の文化や物語が背景になっているものがたくさんあって興味深いですね。


街を歩いていると歴史のあるカフェが次々と現れます。
20091124-leipbaum.jpg
こちらはヨーロッパ最古といわれているカフェ&レストラン、「カフェ・バウム」。
1566年創業のカフェには、シューマンやメンデルスゾーンらも通い、音楽論議を闘わせていたそう。現在、4階はコーヒー博物館になっています。


20091124-leipzou.jpg
ユーゲント・スティール(アール・ヌーボー様式)の装飾が目を引く「カフェ・リケー」。
もともとは、かつてコーヒーと紅茶の販売で広く知られたリケーが建てた見本市商館でしたが、現在はウィーン風のカフェになっています。
象が好きな南アフリカ産の木の実から抽出されたリキュールを垂らした「象のコーヒー」なんていうおもしろいメニューもあります。


古くから商業が栄え、発展していったライプツィヒの街には、パッサージュ(アーケード)も多くみられます。
20091124-leippassage.jpgユーゲント・スティールのファサードが美しいパッサージュ。


モダンな店や高級店が軒を連ねるメードラー・パッサージュには、ゲーテの「ファウスト」の舞台となった老舗レストラン「アウエルバッハス・ケラー」が。
20091124-leipfaust.jpg
入口にはファウストに登場するメフィストとファウストの像が立っています。留学中の森鴎外も通ったとか。


こうやってみると文化と芸術がてんこもりなライプツィヒですが、
この街で活躍したのは芸術家たちばかりではありませんでした。

私が一番行きたかったのがここ、ニコライ教会です。
20091124-leipnikolai.jpg
80年代、この教会に自由を求める若者たちが集まり、定期的に”平和の祈り”という活動がおこなわれていました。
当時は警察の弾圧による逮捕者が続出しましたが、それにも屈せず毎週一回の祈りは続けられ、やがてライプツィヒやドレスデンの大規模な市民デモにまで広がり、ついに89年にベルリンの壁が崩壊。
ひとりひとりの市民の勇気が、当時誰もがありえないと思っていた奇跡、非暴力による東西統一”無血革命”のきっかけになったのでした。
平和を求める民衆の思いがひとつの国を、いや世界を動かしたなんてすごいことですね。
世界がどんな悲惨な状況にみえるときでも、あきらめないで希望を持ち続けることが大事!と思わされる出来事です。

20091124-leipnikolaimark.jpg
「刀を鋤(すき)に!」武器を持つ手が畑を耕しているシンボルマーク。
ニコライ教会では今も毎週月曜日に平和の祈りが続けられています。


**オスタルジー:ドイツ語の「オスト(東)」と「ノスタルジー」をかけた造語。日本語では「旧東独への郷愁」と訳されますが、旧東独体制を美化するものではありません。(そういうニュアンスで使われることもあるようですが、少なくとも私はその意味で使うことはないです。)

■世界あっちこっちスイーツめぐり
http://suiteworld.exblog.jp